Leonard H. Lesko & Barbara Switalski Lesko
A Dictionary of Late Egyptian Volume 1 & 2. 2nd edition.
BC Scribe Publications, 2002/2004
現状、世界で唯一の新エジプト語の辞書。古代エジプト語研究者のレオナルド・レスコー及びバーバラ・レスコー夫妻によって著された。本書は新エジプト語研究には必須の辞書で、出展、語彙解説、例文等、その質の高さは類例を見ない孤高の一冊である。セカンド・エディションの方が稀少且つ改訂が加えられていて精度が高い。絶版稀覯本で版元にも在庫がないため、この2冊はレスコー夫妻の手持ち在庫から幾つか分けてもらった中のひとつとなる特別な個体である。
古代エジプト語には幾つかの段階が存在し、新エジプト語もその段階のひとつである。一般的にガーディナーのEgyptian Grammerが扱う中エジプト語から学ぶ者が多いが、中エジプト語は難易度が実は高く、新エジプト語やコプト・エジプト語から学ぶのが理想である。
中エジプト語まで接辞や語形変化で表現された各語間の関係性が、新エジプト語では定冠詞で表されるようになっていく。また、グループライティングと呼ばれる綴りと発音が一致しない例も出現し始める。これが中エジプト語と新エジプト語の大きな差異である。当時の口語を文語に直接的に反映した結果が表れている。簡単に幾つか例を挙げると、弱母音Ȝ、ỉ、w、女性形を示す子音語尾t が省略されるようになる。これは当時の口語で、それらが発音されなくなっていたことを示している。また、指示代名詞pȜ (男性単数)、tȜ(女性単数)、nȜ(複数) が定冠詞に変容した。加えて、名詞を修飾する際に使用されていた形容詞が名詞句に取って代わった。